オーストラリアで医師を目指すということ

皆さんこんにちは。前回更新した年始の挨拶から、早くも8カ月が過ぎようとしていることに驚いています。

昨年の秋に、オーストラリアでの医師免許書き換え試験の一次(AMC)に合格し、その後は2か月ほど日本に帰って現場に出たりしながらこの春から、次の目標であるクリニカル(わかりやすく言うと実技)試験の合格に向けて新たな学習をスタートしました。

6月からは外国人医師向けのクリニカル試験専門の予備校にも通っています。そこで出会うのは、世界中の医学部を卒業したばかりの若い世代です。私のように40代半ばの生徒はほとんどいません。今は、日本人もいません。そのほとんどが後進国から参加者で、自国で医師として働くよりも、オーストラリアで医師として働くほうが格段と給与がよく、国が社会的にも安定していることからここでの医師免許書き換えを目指しています。(最初からオーストラリアの医学部を目指すほどの経済力はない)

彼らの強みは、すでに流ちょうな英語を話すことです。第二言語であっても、ネイティブ並みに英語を操ります。本当にこれだけ先進国である日本の英語教育が実際にはなんの役にも立っていないことを、こういう場で痛感します。

外国人である私たちが、オーストラリアの医師免許へ書き換える場合、医師としての知識や技術ももちろんですが、この「英語力」こそが、「会話力」=「症例の正確な把握と理解、見落としの防止等」につながるため、何よりも求められるスキルであり、重要なポイントとなります。予備校では、ロールプレイを繰り返し練習し、患者さんのサインを見落とさないように日常会話の中から、ちょっとした異変を察知するようなトレーニングを重ねます。日本での診療でもそうですが、一見病気とは関係なさそうな会話から、重要な発見があることも起こるのです。そこまでの深い英語力というのは、医療英語を学んでいたこれまでよりもはるかに難しく、コミュニケーション能力も併せて必要となるため、苦労しています。

もし、私たちが日本で病院にかかる場合、外国人医師に診てもらいたいと思いますか?その外国人医師が、片言の日本語しか話さない場合、なおさらかかろうとは思いませんよね。

この地でも、そういった意味でローカル(居住者)から見た外国人医師の立場は弱く、需要があるとしたら夜間緊急時のホームドクターや田舎(恐ろしいほどの田舎)などに限定されます。※この場合の外国人医師とは、オーストラリア以外の国の医学部卒業者。

もちろん日本人だけを見るなどの特区などであれば、その需要、存在意義は高くなるのかもしれませんが、オーストラリアではそのような特区もなく、医師免許書き換え試験にパスした後は、「片言の英語を話す一人の医師」として働き方を考えなければなりません。

(続く)


  • 2019.08.20
  • Dr.DOGのオーストラリア留学報告